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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 5/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

5「そういえば、女子高生の妹って言うのは?」渡された写真の束をめくっても、それらしい女の子の姿はなかった。「妹か…… 理り恵えとかいうんだけど、俺がホテルにいる間は、一回も顔を出さなかったよ。塾だか予備校だかが、あるんだと」「じゃあ今、三年?」「いや、二年だって聞いたけど……たぶん、俺に会いたくなかったんじゃないか」焼酎のお湯割りを一息にグラス半分ほど流し込んで、ゴローは面倒臭そうに言った。「それは……やっぱり兄貴が、見るからにチンピラっぽいから?」「兄貴に向かって、ひでぇことを言ってやがる」そう言いながらゴローは、トモローの肩甲骨を裏拳で軽く叩いた。その狙いの正確さゆえに、思った以上の痛みが走る。思わず、ぐふっ、という音が咽喉から漏れた。 「痛いよ、バカ兄貴」反撃しようと拳を挙げたトモローに、ゴローは今まで見たことがないような神妙な顔つきで呟いた。「俺も……痛かったよ」「痛かったって……何が? やっぱり広島で何かあった?」その問いかけに、ゴローはしばらくの間、何も答えなかった。が、その顔をよく見ると──。