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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 6/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

6(げっ、これはヤバいのでは)ゴローの目が見る見るうちに赤くなっていき、心なしか涙が目元に溜まっている。まさか……泣くんじゃあるまいな。「まったく親っていうのは、どいつもこいつも勝手だよな。俺は、その理恵っていう妹の気持ちもわかるよ」「その理恵ちゃんは、どうして兄貴に会いたくなかったの?」自分の冗談が話の腰を折ったのを棚に上げて、トモローは尋ねた。「俺たちが知らなかったみたいに、その子も俺たちの存在を知らなかったんだよ。それどころか、オフクロが再婚だっていうことさえ知らなかったらしい……そりゃ十六、七の女の子には、ショックだろうよ」その年頃なら、まだ親離れしていなくても不思議はない。自分と彰というお兄さんだけの母親だと思っていたのに、いきなり知らない兄弟がいると聞かされれば、ビックリするに決まっている。何より母親に、かつては別の家庭があった……というのは、なかなか受け入れられないのではないだろうか。「俺だって驚きだけど、事実は事実だからね」トモローは、わざとつれなく言った。その子だってショックかもしれないけれど、こっちだってビックリしているのに違いはない。同じ立場の兄貴が大人の視点から彼女の気持ちを推し量れるからとはいえ、泣くほど同