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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 8/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

8れば、関わりたくない。もらったらもらったで、向こうの兄弟や親族によく思われないことくらい、トモローにだって想像がつく。「向こうでオフクロに会った時……俺は、今までのことは全部水に流してもいいって思ったよ……何だかんだいっても、やっぱり自分の親からな」焼酎のお湯割りをグビグビやりながらゴローは言ったが、その気持ちは十分に理解できた。母親が家を出た時、すでに記憶が始まっていたのだから、母親に対する兄貴の思いは、やはり自分と違っていて当たり前だ。「オフクロは何度も何度も頭を下げて、謝ってくれたよ。もちろん、おまえにも申し訳ないって、耳にタコができるくらい繰り返してた」その言葉を聞いた時、トモローはふと息を潜めて、自分の感情の動きに注意を傾けてみた。やはり自分も、そう言われてうれしくなったり腹立たしくなったりするのだろうかと思ったからだが──ほとんど心が動かされないので、少し悲しくなった。もしかすると自分には、そういう情愛を感じる能力が欠けているのだろうか。「だから、俺も昔のことを水に流す気になったんだよ。オフクロに残ってる時間がどれくらいなのかはわかんないけど……その間だけでも、ちゃんと親子をやり直そうと思ったんだ」きっと兄貴なら、そう考えるだろう──自分なんかより、ずっとシャイな感性を持っているのだから。「それなのにな……オフクロ、そのうち遠回しに言い出し始めたんだよ……できれば、俺た