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NHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー page 9/14

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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

9ちの相続分を放棄してほしいって」ツマミのイカ刺しに伸びていたトモローの箸先が、ピタリと止まった。「それって、どういうこと?」「そのまんまの意味だよ。もしオフクロが死んでも、遺産をもらわないでくれって頼まれたんだ。できれば、それを紙に書いてほしいとか何とか……そう言われた時、俺は本当に泣きたくなったね」兄貴の気持ちはわかる。余命宣告を受けたオフクロは、本当にトモローたちに会いたかったのかもしれない。かつて産んだ子供たちの成長した姿を見て、できれば、わだかまりも解消しておきたいとも思っていたかもしれない。けれど、そこに〝相続放棄〟という生々しい言葉がくっつくだけで──単純に、そうとは思えなくなる。自分の死後に彰くんと理恵ちゃんに降りかかるだろう面倒を、今のうちに解決しておこうと考えているとしか、思えなくなるのだ。つまりオフクロにとっては、ゴローとトモローよりも、広島の子供たちの方が大切……ということだ。自分たちは、いったい何回捨てられるんだろう。「……ひでぇな」何だかトモローまで泣けてきそうになったが、グッと堪えた。親というのは、本当に勝手な生き物だ。どこまで子供の人生を巻き添えにすればいいのだ