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概要

朱川湊人,主夫のトモロー,家族小説,NHK出版,WEBマガジン,イクメン,斉藤知朗,花まんま,直木賞

9から」三歳児神話とは、〝とにかく三歳くらいまでは母親自身が養育に専念しなければ、その子供によくない影響がある〟という説だ。どの程度正しいのかはわからないが、同じことを兄貴の口から聞いたこともあるから、それなりに広まっている考え方なのだろう。「まぁ、うちの場合は、育児はトモくんが中心になってるから、そもそもアウトなんだけどさ」「アウトとは失敬な……父親だって、母親と同じような愛情が注げるよ」その時は、そんなオチで話が終わってしまったが──幼稚園なり、保育園なりにチーコを入れる必要性が、現実味を帯びてきているのは間違いない。「いい仕事があれば、働きに出るのは全然かまわないよ……それがチーコにとって良いことなら、何だってやるし」「チーコのためというより、家計のためよねぇ」「いやいや、それだってチーコのためでしょう」世間的に見れば些細なことかもしれないが、斉藤家にすれば、それなりに大きな変革だった。いわゆる〝普通〟の家なら、夫の出世は喜ぶべきことなのだろうが──すべてが逆さまの斉藤家では、家の根幹を揺るがすような事態なのだ。その後、何度かの夫婦会談を経て、チーコを保育園に入れ、トモローがパートタイムの仕