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概要

朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

1 学生時代、トモローはアルバイトの鬼だった。父親は大学の学費は出してくれたものの、その他の生活費や学校までの交通費などは、自分で賄まかなわなければならなかったからだ。また、かねてから憧れていた一人暮らしを始めてしまったために、その家賃なども必要だった。だからトモローの大学生活は、学校とアルバイト先だけで終わってしまったようなものだった。クラブの類にも入らなかったし、費用や時間がかかる旅行の類も、トモローはしなかった。唯一の冒険といえば、当時愛用していた自転車(やはりママチャリである)に乗って、東京─仙台間を往復したことがあるくらいだ。あの時は、尾てい骨が折れたのではというほど尻が痛くなったが、後の話のタネにもなったので、とてもいい経験をしたと思っている。「おまえも、大変だな……他の大学生の連中は、遊んでばっかりなのに」かつて兄貴が、アルバイトに追われるトモローを見て言ったことがあるが──それは兄貴の大いなる勘違いだ。トモローが学生の頃は、春はテニス、夏はサーフィン、冬はスキーと、トモローが走って走って走るワケ2