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概要

朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

4兄貴の会社でも、昼の数時間しか働かない男性のニーズは、あまりないらしい。「あの時とは事情が違うから、あんまり期待すんなよ」そこを何とか兄貴の顔で……と、甘いことを考えてみたが、やはりダメだった。兄貴の顔も、そこまでのものではないらしい。まったく厳ついだけで、役に立たない顔だ。「おまえさ……どうせなら、ちゃんと就職すればいいじゃんかよ。朝の九時から昼の三時半までなんて、どう考えても中途半端だろ。それに働くようになれば、残業だってあるんだぞ」二月の初め頃、わざわざ兄貴の家に呼ばれて、苦言を呈された。「まぁ、おまえは今までよくやったよ。最初は主夫だとか、何を寝ぼけてるんだって思ったけど、ちゃんとチーコの面倒も見てるし、家のこともやってるみたいだからな。おまえは子供の頃から、そういうことが得意だったから、そういうのもいいかって思ってたけど……考えてみたら、おまえもいい歳だよ。再就職するなら、今が最後のチャンスみたいなもんじゃないか?」その言い分も分からないでもない。雇う方の企業にしてみれば、少しでも若い人間の方が育て甲斐があるし、会社に対する忠誠心も期待できる。けれど会社が倒産してから四年間も職に就かずにいた人間など、いくら主夫をしていたと主張しようが、半ば〝得体の知れない〟人間であるのは間違いないだろう。きっと時間が過ぎれば過ぎるほど、就職面で不利になることは確かだ。「もう、ここらでいいだろ。普通に就職しろよ。それなら俺も、会社に掛け合いようがある