ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

5から」「うーん……」トモローには即答できなかった。今、探しているのは、いわゆる〝ちゃんとした就職先〟ではなく、朝の九時から昼の三時半まで働けるところだ。普通の勤め先なら、兄貴に頼らなくても、自分で探し出す余地はまだ残っているように思う。けれど普通の就職をするなら、家の中の多くのことが変わるだろう。たとえば、昔から設計という仕事に憧れ、今も情熱を傾けている美智子に、それを辞めて家庭に入れ……と、今さら言えるだろうか。社内で出世をし、これからさらにバリバリ働くに違いない美智子に、やっぱり世間と同じようにやろうと今さら言い出すのは、あまりに情けない。(ダメだ……俺には、とても言えない)欲張りなのかもしれないが、トモローは家族の誰にも不幸になってほしくなかった。美智子にもチーコにも、楽しい毎日を送ってもらいたい。もちろん自分だって、楽しく生きるつもりだ。だから、誰にも夢を捨ててほしくない。世の中の常識から少しくらい外れているところがあったって、それが夢を叶える過程なら、それもまた〝よし〟じゃないか。「ちえっ、いかにも気に入らんって顔してやがる」