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概要

朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

9チーコが思春期を過ぎ、立派な成人女性になっていたら、そのハードルは上がってしまうかもしれない。少し乱暴な言い方をすると、手を?いで歩ける歳かどうかで、それが決まる気がする。なぜだかわからないが、手を?ぐことで子供は親に守られている安心感を覚え、親は子供を守っている自覚を持つのではないだろうか。それを毎日のように繰り返して、親子の情愛は育つに違いない。(もしかすると、肌で親子になる部分も、あるのかもしれないな)いくら血が?がっていても、自分のように母親に特別な気持ちを抱けない人間がいる。けれど世間には、たとえ血が?がっていなくても、血縁以上に仲のいい親子もいるではないだろうか。そういう人たちは、きっと人よりも、たくさん手を?いできたのかもしれない。だから子供は親を疑わないし、親は子供を絶対に捨てない。(俺……母親と手を?いだことがないからな)広島から帰る新幹線の中でそう思った時、さすがのトモローも少しだけ泣いてしまった。「それで、オフクロ、何か言ってきたの?」「うん……この間、いきなり電話がかかってきてな」「まぁ、電話ってものは、大抵がいきなりだよな」「うるせぇ、いちいち混ぜっ返してんじゃねぇよ」