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概要

朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

1ホームセンター開店の日が近づき、トモローも本格的な勤務を開始した。新しくできた店舗は、家から自転車で北に二十分ほど行ったところにある。うまい具合に保育園が通勤ルートの途中にあればよかったのだが、あいにく東に大きく逸れて、やはり二十分ほど走ったところにあった。早い話が自宅・店舗・保育園は正三角形の形に位置していて、朝からトータル四十分以上のサイクリングをしなければならないのだ。そのためにトモローは、自転車を新調した。やる気の発露のようなものである。あらかじめ言われていたとおり、トモローは家電売り場に配属された。今まで経験のない分野とはいえ、やはり久しぶりに外で働くのは楽しかった。勉強するべきことも多いし、いろいろな人の顔も覚えなければならなかったが、それが苦にならない性格だったのが幸いした。準備期間を経て開店の日を迎えてから、忙しさに輪がかかった。それこそ九時から三時半という勤務時間が、あっという間に過ぎていく。ちなみに、そんな半端な働き方をしていたのはトモロー一人だけで、さらに男性のパートタイマーも、トモローのみだった。トモローが走って走って走るワケ4