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概要

朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

10かったよ」それはでまかせでも、お世辞でもない──二人がいてくれなかったら自分とチーコは、公園で孤独なままだったろう。もう少し普通の風貌をしてくれていれば言うことナシだったが、そう思うのは欲というものだ。武井はトモローへの謝辞をいくつも並べ、その最後に一つ、付け加えた。「これは年下の俺なんかが言うことじゃないッスけど……トモローさんも、お母さんのこと、大事にした方がいいッスよ」母親との?末は、すでに武井に話していた。その時は、母親の身勝手さにいちいち腹を立ててくれることがうれしく思えたものだが──やはり、そうくるか。「トモローさんが、お母さんのこと、よく思わないのはわかるッスよ。でも悪いのは、お母さんばかりじゃないんじゃないッスか」そんなこと、改めて武井に言われるまでもない。トモローが物心つく前に母が家を出てしまった責任の何十パーセントかは父にあり、さらに母の実家にも何十パーセントかはある。「昔のことを、全部水に流せとは言わないッスけど……あと相続を放棄しろって言ってきたことは、別に許さなくてもいいと思うッスけど……もう一回くらい、チャンスをあげてもいいんじゃないッスかね」「チャンス?」「お母さんが、もう一回、トモローさんのお母さんになるチャンスに決まってるじゃないス