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概要

朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

13と、それでいいのだろう。そう思っていると、誰かがトモローの尻を叩いた。振り向くと、同じ組の男の子が、何だか恨めしげな顔で、こちらを見上げている。「チサトちゃんのパパ、俺も抱っこしてよ」そのかわいさにハートを撃ち抜かれたトモローは、二人を降ろすと、代わりにその男の子を抱き上げた。それを見た他の子供たちが、わらわらと駆け寄ってくる。「アタシも抱っこしてよぉ」「ユウタも、ユウタも!」正直、悪い気分ではなかった。だから律儀に希望者全員、変わりばんこに抱き上げてやったのだが、こういう力技が、男の育児の醍醐味……とも言えるか。それを見ていたチーコが、ついに癇癪を起こして叫ぶ。「チーコのパパだよう!」その日の夜、トモローは母親に手紙を書いた。最近ではワープロを使うことの方が多いが、久しぶりに万年筆で、ゆっくりと手書きした。内容は、特にどうということはない──自分と家族の近況、兄貴家族の近況、さらに初夏の気候の気持ち良さを記しただけだ。さらに最後に、夏になったら美智子とチーコを連れて、遊びに行きたい、と添えた。詰なじる言葉も恨む言葉もない手紙を読んで、母はどう思うだろう。けれど、きっと母には、