ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

15をする。チーコを横目に見ながら夕食の支度をして、七時には必ずチーコと一緒に食事する。うまくいけば、そのあたりで美智子が帰ってくるので風呂を頼んで、自分は外でチーコを受け取る。八時半から九時にはチーコを寝かしつけ──そこから、ようやく自分の小説が書けるのだが、場合によっては美智子の会社の愚痴を聞くこともある。あるいは夫婦の他愛ない会話で時間を使ってしまうこともあるが、それも大切かつ楽しいので、トモローにとっては欠かせない時間だ。こんなふうに、トモローは走るように生きている。まさに走って走って、走りまくる日々なのだが──それが主夫というものなのだから、仕方なかろう。しかも自分で選んだ道、弱音を吐いてるヒマなんかない。その努力が実を結ぶ日が来るのかどうかは本人にもわからないが、それまでは走り続けるしかないのだ。大丈夫、きっとうまくいく。(おわり)