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概要

朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

5そう尋ねると、組の責任者になっている保育士さんが、眉尻を下げて答えた。「すみませんけど……できれば、それは勘弁してもらえませんか」「えっ、どうしてです?」自分の子供が傷つけられたのだから、誰がやったかくらい教えてくれたっていいだろうに。「実はこういうことは、決して珍しいことじゃないんです。この組の子はみんな二歳児ですけど、このくらいの子供は、月齢によって全然違うっていうのは、お父さんもおわかりですよね?」「それは、もちろん」同じ二歳児と一口に言っても、二歳児になりたてと二歳十一か月の子供では、まったく違う。「それに、その子自身の性格もありますし……結局は、どの子も、まだ発育途中であることには変わりないんです。それなのに、『あの子が?んだんですよ』なんて教えてしまうと、お父さんが、その子のことをよく思わなくなってしまうんじゃありませんか?」なるほど、確かにそうかもしれない……と、トモローは思った。その子を見るたびに、俺のかわいいチーコにケガをさせた極悪人め、と思ってしまうかもしれない。そして、それはきっと態度に出るだろう。「もう二度と起きないよう、もっと注意しますから」そう拝むように言われては、それ以上は言えなかった。同時に保育士さんというのは、大