ブックタイトルNHK出版|WEBマガジン|主夫のトモロー
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朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。
6変な仕事だな……と、つくづく思った。本当に、いろいろなことに気を回さなくてはならない。けれど、その先生方の気遣いも虚しく、帰り道にチーコ本人に聞くと、あっさり〝アイコちゃん〟と答えた。(あぁ、あの子か)まだ入所して日が浅かったけれど、すぐに思い出せる顔がある。何度目かにチーコを連れて行った時、「どうして、パパと一緒に来るの? ママいないの?」と、やたらトモローに聞いてきた女の子だ。どことなく気の強そうな顔をしていたが──あの子か。(やれやれ……チーコも大変だよな)この世で生きていくということは、他人と共存する術を、日々学ぶということに他ならない。できれば、そんな気苦労を少しでも減らしてやりたい……と親としては思うが、それは甘やかすことにも?がってしまうのだから難しい。その日の夜、?まれた傷を見せて説明すると、美智子は言った。「この歳の子供なんて、まだ完全に人間になりきれてないんだから、お互いさまよね。明日は、チーコがその子を?むかもしれないし」今までチーコが人を?んだことなど一度もないが、確かにこれからも絶対にないとは言えない。