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概要

朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

7「でも、保育園の先生も大変ね。?んだ子を教えてくれなかったのは、子供のためもあるかもしれないけど、親同士がトラブルになるのを避けるためでしょ」「あぁ、そういう面もあるかもしれないね」ふと関西に引っ越して行った小暮さんを思い出す。娘のエミコちゃんが他の子にいじめられているのに耐えられず、つい手を出してしまった彼女は、こんな思いに何度も耐えてきたのだろう。「トモくんはそういう人じゃないけど、男の子のお父さんの中には、子供に『やられたら、やり返せ!』って焚きつける人もいるじゃない? あんなふうに言われたら、子供も大変よね……逃げ場がなくなっちゃうわ」「俺は、そんなことは言わないよ」ただ、当のアイコちゃんを警戒する気持ちが芽生えていたのは本当だった。それこそ、「アイコちゃんが遊んでいる近くには行かないようにね」なんて、チーコに言いたくなる気持ちもあった。けれど親なら、そんな気持ちにも耐えなくてはならないのだろう。本当に子供を育てていくのは、大変なことだ。幸いにして、トモローがアイコちゃんについて悪い感情を持つことはなかった。その翌日、せっかく先生たちが内緒にしたのに、登園の際に顔を合わせたアイコちゃんのお母さんの方から、謝ってきたからだ。