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概要

朱川湊人「主夫のトモロー」:家事や育児を通じて“主夫”トモローが直面する苦悩と出会いの毎日を描く、現代の「イクメン・婚活ブーム」に一石を投じる、痛快家族小説。

9吉も連れて、あいつの実家に帰ったんッスよ」「なるほど、そこで許してもらったってわけか」「一発、殴られたッスけどね」そう言いながら後頭部を撫でたので、どうやら頭を、バチーン! とやられたらしい。「一発で済んでよかったじゃないか。お義父さんに感謝しなよ」「それがね、トモローさん……全然痛くなかったんッスよ。お義父さん、力いっぱい殴ったって言うんッスけどね、全然痛くないんッス」そう語る武井の目には、不似合いな涙が浮かんでいた。「病気、かなり進んじゃってるみたいで」それで、せめて残されている時間だけでも近くにいてやるために、ノリコの実家がある地方に移り、仕事もそこで新しく探すのだそうだ。「もちろん引っ越す前には、ちゃんと挨拶に行くつもりでしたけど……俺、トモローさんに会えてよかったッスよ」「何だよ、こんなところで、いきなり」何もスーパーの鮮魚売り場でする話でもないだろうに。「けっこう、いろいろ悩んでたんで……すっごく助けられました」「そうかい? でも、それは俺も同じだよ。男が一人で公園に子供を連れて行ったりすると、やっぱり珍しい目で見られるからさ。武井ちゃんやノリコちゃんがいてくれて、ありがた