TOPICS Interview 堀北真希 連続テレビ小説 「梅ちゃん先生」ヒロイン・下村梅子役

写真 堀北真希
last updated Apr.1,2012.

ドジで失敗も多い梅子だけど、
応援したくなる

小さな心の揺れを見落とさないように

目下、脳みそをフル回転させて梅子役に臨んでいます。というのも、半年間のドラマなので、主人公の成長がじっくり丁寧に描かれていくからです。劇的な事件が次々展開されるというよりは、家族やご近所さんや友人との交流の中で起こるちょっとした出来事が少しずつ梅子に影響していく。喜怒哀楽が表に出ないようなモヤモヤした心の揺れや変化を細かくすくっていくことが、何より大切だと思うんです。ただ、撮影を効率よく進めるために、22歳の梅子を演じたすぐあとに16歳の梅子を演じたりすることも。1シーンたりとも気を抜きたくないので、台本を何冊も並行して読み、微妙な成長や反省の軌跡を見落とさないようにと心がけています。「このシーンにはこだわりたい」と思ったときには、演出陣に相談しながら、梅子の心の襞に思いをはせる毎日です。

写真1

ガレキの中でも明るさを失わない梅子

写真2

クランクインは、終戦直後の蒲田の焼け野原を再現したオープンセットで迎えました。台本を通じたドラマの印象はとても明るく、梅子もドジで笑わせるキャラクターなので、景色とのギャップを感じました。ガレキだらけの灰色のセットを客観的に眺めるのではなく、自分がそこで生活している気持ちになり、なおかつ明るさを失わない梅子でいたい。そんな思いを新たにしました。ドラマの流れも、資料などで見聞きするしかない時代を、リアルに浮き彫りにしていきます。配給頼みの慎ましい下村家の食卓、旋盤工場復活のために悪戦苦闘する幼なじみの家族、偶然出会う戦災孤児の悲しい境遇……。誰もが戦争の傷跡を抱え、生きていくだけで精いっぱいだったのだと。私たちの時代は、部屋に飾る花とか、香りのいいキャンドルとか、楽しむためだけのものにお金をかけられます。ゼロの状況から今の暮らしに至るまでに、当時の人がどれだけ頑張ったことか。モノ不足に苦しみながらモノ作りに取り組む隣の安岡家の親子や、社会や自分の気持ちに向き合い、順調だった人生を捨てて事業を立ち上げる竹夫兄さんの生き方などが、それを伝えてくれます。

梅子は、優秀な姉や兄とは違って不器用で、女学校時代はしっかりした考えも持っておらず、厳しい父親には怒らてばかり。その父が戦災孤児の命を救うのを目の当たりにして「医者になりたい」と言っても、反対されてしまいます。私は梅子よりもしっかり者だと思いますが(笑)、父親に理解してもらいたいのに通じない悔しさは、経験したことがあります。「こんなに一生懸命話しているのに、なんでわかってくれないの?」って。でも、かみ合わなくても親子の愛は揺るぎないもので、それはドラマの根底に流れるものでもあると思うのです。頼りなかった梅子が、父と同じ道を志して行動を起こしていく経過を大切に演じていきたいですね。

 

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