財政政策も、やはり国境を越えたヒト・モノ・カネの移動に振り回されています。
企業は生産コストが最も低くて、利便性が最も高くて、行動が最も制約されず、そして税金を最も払わずに済む場所を求めて立地を動かしていきます。そのような企業行動が、自国から彼らが大挙して「家出」することにつながってしまえば、国の財政はただちに窮地に陥ります。
なぜかといえば、家出企業は自国内で雇用を生み出しません。彼らが雇用機会をつくり出すのは、家出先の国々においてです。国内の雇用が減った分、雇用対策や失業保険の給付で財政負担は増えます。ところが、家出企業は、多くの場合において自国に対して税金を払いません。そもそも、彼らは家出先の外資優遇税制などに魅力を感じて出ていく場合が多いわけですから、これは当然です。
かくして、自国企業の家出は、その国の財政状況を確実に悪化させるといっていいでしょう。
そればかりではありません。グローバル時代においては、政府が公共事業で国内景気を盛り上げようとしても、従来ほどの政策効果が出にくくなっていると考える必要があります。なぜなら、公共事業を受注した大手企業は、下請け作業の発注先として海外の中小企業を選んでしまうかもしれないからです。
近ごろは、公共事業といえども、採算管理がうるさくなっています。仕事を受けるための入札時にも、安い工事費を提示できる方が有利です。となれば、各種の条件を考慮した結果、受注企業が外資を下請け先にし、さらには外国人労働者を多く雇うというようなこともあるかもしれません。
そうなれば、一つの公共事業が国内で生み出す経済活動は、従来に比べれば限られたものに留まってしまう場合が出てくるということです。
このような事態を回避するには、公共事業の受注者に対して外資とのコラボを禁止したり、外国人労働者の活用を認めないなどの措置をとらなければなりません。実際に、公共事業についてはこのような措置がとられる場合があります。
ですが、これは基本的にWTOのルール違反ですし、いかにも閉鎖的な対応です。それも、国益のためにはやむなし。そのように考えるのか。この辺りが、グローバル時代をそれぞれの国がどう生きるかという問題の勘どころにかかわってくるテーマといえるでしょう。
いかがでしたか? 本書ではさらにこの後、為替政策、通商政策の現状分析と提言が続きます。「経済を生かすも殺すも、我々の心意気次第」とは浜さんの言。政権交代を機に、新しい時代の経済政策を一緒に考えていただければ幸いです。