TOPICS Interview 井上真央 大河ドラマ「花燃ゆ」杉 文 役

写真 井上真央
last updated Jan.1,2015.

人と人を出会わせる。
その使命を
文と大事に演じたい

 男たちが歴史を動かしていく時代の中で、文は何か大きなことを成し遂げたわけではありません。正直なところ、私自身、吉田松陰に妹がいることさえ知らず、その妹が主人公だとお聞きしたときは、松陰を主役にしたほうがいいのではないかと思ったほどでした(笑)。でも、家族を描くことで、これまでとは違う吉田松陰が見られるかもしれない。松陰だけでなく、松下村塾や、さらに幕末という時代も、このドラマでしか描けないものになるのではないかと、どんどん楽しみになってきたんです。

撮影を重ねる中で、すでに、今までにない松陰が見えてきています。私が思っていた松陰は、誰もやらないことを実行する過激な異端児というイメージでした。でも、家族の言葉を静かに受け止めたり、仲間のことを思って涙したりする姿に、優しい人柄や人間らしさが見えてくる。そんな松陰の内面を感じられるのは、本当にこの作品ならではだと思います。

妹になってみて思うのは、家族から見ても、吉田松陰という人物は特別だったんだろうなということ。この家族、松陰以外は全員がごく普通のおおらかな人たちなので(笑)。「寅次郎(松陰)は私たち家族には成しえない何かを成す人間だ」ということを感じていたのでしょう。だから、密航を企てて獄中生活を送ることになっても、ひたすら支え続けた。この家族あっての吉田松陰なんだと改めて感じます。

今回のドラマでは、そんな家族の中でも、特に文が、松陰の力になっていきます。文が人と人とを出会わせる使命を担っていて、脚本でもそこがキーになっています。自宅に松下村塾があるのですから、実際の文さんも、それはもう、いろいろな人と出会ってきたはず。しかも、脚本に描かれている文は、いつも一歩引いて周りを見ているような子なんです。人の本質を見て、その人のことを考えて行動できるから、自然と人と人をつないでいけるのでしょう。第1話では、まだ小さい文ちゃんが、松陰と、後に松陰の掛けがえのない友人となる小田村伊之助とを出会わせているんです。松陰と、久坂玄瑞や高杉晋作との出会いにも、文は一役買っている。そんな出会いの部分は大事に演じていきたいと思っています。

また、文にとって大きかったのは、兄の松陰と夫の玄瑞の死。志を持ちながらも若くして亡くなってしまう人間が、こんなにも身近にいたことで、彼らが何を思い、何を目指し、どう生きようとしていたのか、文は彼らの意志をちゃんと見届けて、受け継いで生きていくのではないでしょうか。

井上真央 写真1 井上真央 写真2

 

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