TOPICS Interview 井上真央 大河ドラマ「花燃ゆ」杉 文 役

NHK出版 Webマガジン井上真央

松陰たちの意志を
受け継ぐことが
文の強さになっていく

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演じていても、松陰が発する行動や言葉には、目が覚める思いがします。例えば、「お前はどう生きる? 自分の命を何のために使う?」と文に問う言葉。役の設定としては12歳ぐらいのときに兄に言われるセリフなんですが、まだ大人になっていない文に真正面から問う松陰が好きですね。“じゃあ、自分の使命は何なのか。自分は自分の立場で何ができるのか”ということを真摯に考えて、兄のために塾生を集めたり、みんなのためにおにぎりを握ったりと、一生懸命になっている文も素敵。松陰の言葉を吸収しながら生きていく文を通して、私自身も成長させてもらっているような気がしています。

だからこそ、その兄が亡くなったとき、どんな思いになるのか。それも「安政の大獄」によって処刑という形で亡くなるので、想像もつきません。そのうえ、夫も「禁門の変」で自刃してしまう。残された者としては、彼らの無念も自分の悲しみも、全部背負って歩いていかなければならない。結局、どんな時代でも、最も苦しむのは国の動きに関与できない、何の力も持たない人たちなんですよね。その切なさも、文を通して描けるのではないかと思います。そして文は、苦しみを一つ背負うたびに覚悟をし、強くなっていくんだろうと、今はそんなふうに考えています。

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松陰と玄瑞の死後は、文自身も波乱万丈な人生を送っていきます。長州藩主・毛利家に仕えて大奥に入ったり、果ては、姉の夫だった伊之助と結婚することになる。どのような経緯でそうなったのか、そのとき文がどう思っていたのか──。そのあたりは史料には残っていないので、ドラマで自由に描けるところ。今後どんな展開になっていくのか、私自身ワクワクするので、見てくださる方にも楽しんでいただけるストーリーになっていると思います。

朝ドラのヒロインを務めたときにもそうでしたが、主演は周りで支えてくださる方がいてこそできること。今回も、“配慮はするけど遠慮はしない”と決めて、皆さんに甘えようと思っています(笑)。大沢たかおさんをはじめとする共演者の方々も、「大丈夫? 頑張りすぎないで」と声をかけてくださいます。それには“真心”で応えるしかありません。

「至誠にして動かざるは、未だこれ有らざるなり」

真心を尽くせば成せぬことはないという意味の、松陰が好きだった言葉。この言葉に尽きると思っています。みんなの真心を合わせて、大河ドラマ「花燃ゆ」を作っていきたい。この作品だからこそ描ける幕末の人間ドラマを、どうぞ楽しんでご覧ください。

(『NHK大河ドラマ・ストーリー 花燃ゆ 前編』より再録)
写真 いのうえ まお
いのうえ まお
1987年生まれ、神奈川県出身。ドラマ、映画、舞台など多方面で活躍。主な出演作にドラマ「花より男子」シリーズ、「ファースト・キス」「トッカン」、映画「僕の初恋をキミに捧ぐ」「太平洋の奇跡−フォックスと呼ばれた男−」「八日目の蝉」「永遠の0」「白ゆき姫殺人事件」など。NHKでは、連続テレビ小説「おひさま」ほか。また、第62回NHK紅白歌合戦では紅組の司会を務めた。大河ドラマは初出演。

NHK大河ドラマ・ストーリー 花燃ゆ 前編

大島里美 作
宮村優子 作
NHKドラマ制作班 製作協力
NHK出版 編
定価 1,134円 (本体1,050円)
好評発売中
NHK大河ドラマ・ストーリー 花燃ゆ 前編
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