ほっぺたをつまむのも
家族なら自然なことだから
玉木 それにしても、仕事嫌いの新次郎を社長にしてしまうなんて、あさは新次郎をおだてるのがうまい。
波瑠 お仕事の楽しさや喜びを知ってもらいたくて、旦那様を上手に持ち上げたというか。
玉木 押しつけがましく感じさせないところが大森美香さんの脚本のすばらしさ。そこに僕らがいかに肉づけしていくかが大事だと思っていて、台本に書かれていないところもさらに深く考えたり、アイデアを出し合ったりして膨らませています。
波瑠 収録の待ち時間にいろいろ相談してますね。
玉木 例えば炭坑であさのほっぺたをつまんで「大福餅や」とやるシーンも、1回きりで終わるのはもったいないなと。台本には書いていなくても、ここぞというときに、またつまむことでその意味や説得力が増してくると思ってやっています。
波瑠 おかげで私のほっぺたは遊ばれ放題です(笑)。
玉木 きれいに「つまみました」というのは避けたかった。リアリティーがなくなるし、家族ならごく自然な触れ合いだから。ちょっと失礼かなと思いつつ遊ばせてもらいました(笑)。
波瑠 ふふふ。だから私も千代役の鈴木梨央ちゃんのほっぺをつまむことにしたんです。
玉木 それとふたりでセリフ合わせをすることもあるんですけど、ことば指導の先生がいないとだんだん違うイントネーションになってしまう。
波瑠 ふたりとも大阪出身じゃないから(笑)。加野屋のシーンなら大阪出身のキャストの方がいて、困ったときには教えてもらえるけど、ふたりきりのシーンは指導の先生も大変そうで。不思議なことに、自分が先生に教えられているときはすぐに理解できないのに、先生が玉木さんに教えていることはよくわかるんです。
玉木 そうそう。僕も先生が波瑠ちゃんに教えていることはよくわかる!
頑張る女性たちに
共感していただきたい
玉木 収録も折り返し点を過ぎたけど今の心境はどうですか?
波瑠 クランクインしたときは、あさと一緒に成長できたらと思っていたんです。でも、あさは商人として、妻、母としてどんどん成長していくので、置いてきぼりを食らっている気持ちになることも。ただ、私自身も変わっているとは思うんです。うまく言葉にできないけど、女性ならではの柔らかさをより一層強く伝えられるキャラクターにしたいと考えるようになってきました。
玉木 ストーリー展開が速いから、これは追いつくのが大変だなと感じるところはあります。ただ、客観的に見て、あさがだんだん強い女性になってきていることはわかる。それを演じ分けられる波瑠ちゃんはすごいなと。表情がどんどん強くなるあさに刺激を受けて、僕も頑張ろうという気持ちになる。
波瑠 物語では千代が自立する年齢にさしかかって、あさと衝突するようになっていく。それを押さえつけるのではなく、ひとりの女性として尊重しながらどう関係を作っていくのかというところを、あさとしても私としても課題にしているので、そこをうまく表現できたらいいな。
玉木 新次郎も父親としてどう存在すべきかということを考えます。仕事面では、あさが新しい事業を興す中でまた衝突もあって、いろいろな場面で新次郎が中和する役割を果たす。きっとそういうスタンスは変わらないだろうと思います。
波瑠 まだまだあさの試練は終わりません。ぶつかり稽古の連続です。今の世の中でもいろいろな葛藤を抱えながら仕事や子育てをしている女性がたくさんいると思うので、そんな皆さんに共感していただけて、同時に背中を押せるようなドラマにしていきたいですね。
玉木 朝ドラならではのホームドラマ感があって、時代は違っても「あるある」がいっぱい詰まっている。そこを楽しんでいただいて、明るい朝が迎えられるよう温かいドラマをお届けしたい。そのためにも、僕らは役に徹してやっていきたいです。
波瑠さん:Styling=明石恵美子 Hair&Make-up=松岡奈央子 衣裳協力=Omekashi、Sheta
玉木 宏さん:Styling=上野健太郎 Hair&Make-up=渡部幸也/ELLA(エラ) 衣裳協力=シャツ¥4,000(GANT RUGGER)、
デニムパンツ¥28,000(Niche.)、靴¥45,000(RANCOURT&Co.)以上すべてGANT RUGGER原宿 TEL 03-5413-3413
※すべて税別 ※ジャケットはスタイリスト私物
了
(『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 あさが来た Part2』より再録)
はる
1991年生まれ、東京都出身。2006年、ドラマ「対岸の彼女」で女優デビュー。07年、ファッション誌の専属モデルに。13年にはテレビ番組「A-Studio」でMCを務める。映画「グラスホッパー」「流れ星が消えないうちに」(主演)のほか、NHKでは「おそろし~三島屋変調百物語」「書店員ミチルの身の上話」などに出演。
たまき・ひろし
1980年生まれ、愛知県出身。98年、ドラマ「せつない~TOKYO HEART BREAK~」で俳優デビュー。ドラマ「のだめカンタービレ」「残念な夫。」のほか、NHKでは、時代劇「桜ほうさら」、大河ドラマ「篤姫」「平清盛」など出演作多数。連続テレビ小説は「こころ」以来、2作品目となる。