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インタビュー

柴咲コウ

大河ドラマ「おんな城主 直虎」
井伊直虎役

最終更新日 2017.05.01

城主になった直虎が今の自分にリンクするんです

 第1~4回の子役時代は、一視聴者としてドラマを楽しみました。と同時に、今回の大河ドラマに期待されるものはなんだろう? 合戦シーンが少ない分、どんなおもしろさが出せるだろう? そんなことも考えながら見ていたんです。そんな中で感じたのが、このドラマが持つ明るさや分かりやすさ、すがすがしさ、小気味のよさ。私もそこはしっかり引き継いでいきたい、そう思って演じています。

 領主になった直虎は、右も左も分からないところから周囲と関係を築き、井伊家や領民のために奔走します。その状況は、どこか今の自分にリンクしている。これまでの私は、ドラマの現場にどうなじもうか、自分の役割をどう全うしようか、と、ある意味自分に重きを置いて考えていました。でも最近は、皆のテンションを上げたい、疲れているスタッフをケアしたい、そんな思いが増してきたんです。直虎も「さて、何からすればよいのじゃ?」とすぐ素直に聞く人なので、私も彼女のように模索しながらも、皆を引っ張っていきたい。一人っ子気質の私がどこまでできているか分かりませんが(笑)、日々直虎から学んでいますね。

 初めて領主の座に座ったときの気持ちは、想像していたものとは違いました。もっと偉そうな気分になるかと思っていたのですが、むしろ平らな気持ちで、人々の思いをくもうという感情が生まれたんです。あぁ、ここは、全体のバランスを見ながら方向性を探っていく場所なんだと感じましたね。私自身、物事を客観的に見て、コントロールしたりプロデュースしたりするのが、実はすごく好きなんです。戦国時代の女性のように、男性の後ろに控えているというタイプではなくて(笑)。宿命みたいなものがあるとしたら、完全に〝男の星〟を持って生まれたなと思っているんですが……。女性でありながら城主になる宿命にあった直虎と、そんなところも共通している気がします。

 領主になったばかりの直虎は、無知で未熟。そのことを有能な小野政次に思い知らされます。政次と向き合うと、行間を読まされるというか、目線一つにも意味があるのではないかと、〝左脳〟で考えさせられるんですよね。だけど、結局は、「味方だよね?」という感情が勝ってしまう。これはもう、絆としかいいようがないですね。政次も、奥山朝利を斬ってしまったときのおびえた顔は、直虎にしか見せていないわけですから。第18回で、直虎と政次がお互いの思いを共有し、2人の関係が大きく変化するシーンがありますが、そこでは高橋一生さんと魂をぶつけ合って芝居ができたと思います。

「やってみねば分からぬ」という心意気に、強く共感します

 中盤に入り、新しいキャラクターが次々登場して、いい緊張感を与えてもらっています。直虎にキレまくる家臣・中野直之との絡みは、最初はストレスに近いものがありましたが(笑)、お互いのよさを認め合うようになると、分身というか、兄弟みたいな親近感が芽生えています。奥山六左衛門は、武術も政も苦手だけれど、とにかく優しい。こういう人は、社会に絶対必要なんです! 安心感と次に向かうパワーをくれるオアシスのような存在ですね。直親の娘であると主張する高瀬の出現は、あの時代にありえることとはいえ……、複雑でしたね(苦笑)。第20回で、直親への思いをしのの前で爆発させるシーンがありますが、そこでは今まででいちばん女性らしい直虎が見られると思います。それがきっかけで、しのとの関係も変わっていくので、楽しみにしていてください。

 瀬戸方久は、一見、愛がないように見えて、「経済が回らなければ、国も人も存続できませんよ」と、大事な指摘をしてくれる、不思議と頼もしい人。ムロツヨシさんの芝居は、思い出すと噴き出してしまうほどおもしろくて、時代劇という制約がある中でのリミッターの外し具合は、さすがだなと思います。そして、直虎にとってのキーパーソン・龍雲丸。謎の人物ですが、理屈抜きで何か感じるものがあって、彼に興味を惹かれる直虎の気持ちもよく分かります。

 直虎の魅力の一つは、身分や損得勘定にとらわれずに、「いいな!」という直感で動くところですよね。井伊の領民たちも、直虎が私利私欲のために生きていないことが分かっている。だからこそ、最終的には直虎を受け入れるのだと思います。直虎は龍雲党から、生きていくすべがあることの強さを感じ、領民たちに学問や手習いを授けます。それは恐らく、自分の限界を本能的に分かっていたからだと思うんです。つまり、自分は単なる〝つなぎ〟にすぎないんだと。虎松が領主に就くまでの間に、なんとか井伊の領民の暮らしを底上げしたかったのではないでしょうか。直虎が考える社会の理想はどんなものだったのか、そんなことも考えています。

 私も直虎と同じく「やってみねば分からぬではないか」というタイプなので、趣味もとことん極めようとしてしまうんです。陶芸もその一つ。陶芸は、技術や心の迷いが歴然と出る一方で、技があるからいい作品になるとは限らない。「お茶碗のつもりだったけど、湯飲みにしちゃえ!」と、失敗を失敗にしない手だてもある。思えば、直虎の生き方に似ている気もしますね。

 平日はほぼ収録で、休日は台本と向き合う日々です。お酒も飲んでいないし、これほど真面目な生活を送るのは人生初かも(笑)。でも、それが今の私にはいいバランスみたいです。直虎を演じながら、私も自分の人生について具体的に考えるようになりました。直虎と一緒に大人の階段を上っている感じかな(笑)。ドラマの後半に向けて、直虎の成長が生き生きと描かれていきます。物語の行方をぜひ見守ってください!

(『NHK大河ドラマ・ストーリー おんな城主 直虎 後編』より再録)
大河ドラマ「おんな城主 直虎」 柴咲コウインタビュー(前編)はこちら

プロフィール

柴咲コウ(しばさき こう)

1981年生まれ、東京都出身。主な出演作に、ドラマ「GOOD LUCK!!」「Dr.コトー診療所」「オレンジデイズ」「ガリレオ」「わが家の歴史」「信長協奏曲」「○○妻」「氷の轍」、映画「GO」「世界の中心で、愛をさけぶ」「メゾン・ド・ヒミコ」「どろろ」「舞妓Haaaan!!!」「食堂かたつむり」「青天の霹靂」など。「RUI」としてリリースした「月のしずく」が大ヒットするなど、歌手としても活躍。今作がNHKドラマ初出演となる。