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対談

連続テレビ小説「わろてんか」
葵 わかな(北村てん 役) × 松坂桃李(北村藤吉 役)

最終更新日 2018.02.01

取材・文=上原章江
撮影=Sai photograph

最後まで「二人三脚」でどうぞよろしくお願いします

19歳という若さで、北村てんの一生を堂々と演じ続けている葵わかなさん。朝ドラヒロインの夫役は2度目であり、てんの夫・北村藤吉を愛情深く演じてきた松坂桃李さん。キャリアも性格も違うふたりで作り上げてきた〝夫婦像〟と、撮影の裏側に迫ります!

松坂
初めて会ったのは、去年の春頃、ことば稽古のときかな。
そうですね。松坂さんは私よりずっと先輩だし、大人だし、私に妻役が務まるだろうかって、不安もあって……。正直、すごく緊張していました。
松坂
してたね~、緊張。でも、朝ドラは長い時間をかけて作っていくものだから、少しずつ自然に、お互いの距離を縮めていければいいかなって思ってた。だから、心配はしてなかったよ。
私はあの段階では、今みたいに距離を縮めていけるなんて、1ミリも思えていなくて……。
松坂
あはは。それもすごいね。
たぶん、松坂さんだけでなく、共演者の皆さんと距離をもっと縮めなければとか、考える余裕もなかったんだと思います。徳永えりさんだけは、女性どうしだし、共演する期間も長いから、自分から積極的に話しかけたりしていたんですが。
松坂
そうだね。おトキちゃんとはすぐに仲よくなってたね。
もっと「松坂さ~ん」って、年下らしく甘えたりしたほうがいいのかなって思ったときもあったけれど、私、そういうの得意じゃないし……。
松坂
いいよ、いいよ。そんなことしなくていい(笑)。
結局、途中からは、あんまり考えないことにしたんです。そうしたら、いつの間にか、すっかり打ち解けられて。びっくりです。想像もできなかった!
松坂
いやいや、まあ、こうなるでしょう。夫婦役を半年も一緒に演じていたら。

どちらも役柄とはあまり似ていないかも

今では松坂さんにツッコミを入れられるぐらいになって。待ち時間にあんまり子どもみたいにふざけていたから、思わず「小学生か!」って言ったこともありましたよね(笑)。
松坂
ははは。でもさ、ヒロインとして朝ドラの現場を背負うって、僕でも想像つかないぐらい大変なことだと思うんだ。だから、相手役は、それぐらい軽い感じがいいんじゃないかって。そうじゃないと、気を遣って疲れちゃうでしょ。作戦だよ。
ええっ、そうだったんですか!?(笑)。でも、松坂さんは、現場でいつも私を最優先してくれますよね。私がどう演じようか迷っているときとか、必ず「てんはどう思ってるの?」って聞いてくださって。
松坂
これだけの人が関わっている作品だから、いろいろな考え方があるよね。でも僕は、朝ドラはやっぱり、ヒロインの感情を中心に作っていくドラマだと思っているから。
「夫婦の話だから何でも相談してね。気持ちを共有するだけで、楽になるよ」って言ってくれたこともあったじゃないですか。私、あの頃からちゃんと松坂さんに自分の気持ちを伝えられるようになった気がします。9週を撮影していた頃かな。
松坂
えっ、9週? 遅っ。そんなにかかってたんだ(笑)。でも、今ではすっかり現場の中心にいる人になったよね。みんなが葵わかなという女優の吸引力に惹きつけられて、現場がひとつにまとまっていったというか。
それはない。ないです……。
松坂
褒められるの苦手だよね。僕もあまり得意じゃないけど、僕以上に(笑)。
私も松坂さんを困らせようと思って褒め返したりするけれど、松坂さんはいつも余裕がありますよね。私、なんだかちょっと悔しくて(笑)。
松坂
いやいや、こう見えて僕だって、毎日大変だったんだから(笑)。君より早く、1週からクランクインしてるし。
あっ、そうでした!(笑)。
松坂
それにしても、葵さんは、人との関係の築き方が、てんとは全然違うよね。てんは最初からどんどん相手を受け入れていくタイプ。葵さんはまずは立ち止まって、ゆっくり受け入れていくタイプ。どちらも真面目なんだけれど、方法が真逆。
おっしゃるとおりです(笑)。
松坂
僕も、藤吉とはあんまり似ていないと思うけれど……。
そうですね。でも、何があっても「ま、いいか。何とかなるでしょ」って明るく言えるところは、似てるかも。
松坂
あ、なるほど。確かに。
基本的な性格は違いますよね。藤吉さんは長距離でも短距離でも、とにかくいつも全力で走っている感じ。松坂さんはちゃんと長距離なのか短距離なのか考えて走っている気がします。
松坂
正解! すごいね。分析がうまい(笑)。

「二人三脚」ということばがぴったり

松坂
とにかくてんは、何に対しても「信じ抜く力」がずば抜けて高い女性だよね。だから、藤吉はもちろん、周りの人はみんなてんに吸い寄せられていくのだと思う。
そうですね。特に、てんの藤吉さんを信じ抜く気持ちは、若い頃からずっと変わっていない。結婚しても、子どもができても、いくつになっても。あんなに人を思えるってすてきなことだと思います。だから、苦労は多いけど幸せな夫婦だなって。
松坂
「二人三脚」ということばがぴったりはまる夫婦。一見、てんが藤吉を支えているように見えるかもしれないけれど、風鳥亭を大きくするという共通の夢を持って、お互い支え合っている。
(うなずきながら)てんは会社が大きくなっても、いつまでも情に流されがち。でも藤吉さんは、ちゃんと先々のことや経営のことを考えてる。そして、藤吉さんがそうやって経営者としての立場をぶれずに持ち続けていられるのは、てんが芸人さんや周りの人に対して情の部分を持ち続けているからで……。
松坂
そうそう。でも、確かに苦労は多かったよね。藤吉が電髪(パーマ器)で失敗して借金作ったところから始まって。
結婚するまではいろいろありましたね~。リリコさんのこともあったし。
松坂
ああー。さすがのてんも怒って藤吉をたたいたよね。
あのときは、てんは女中として北村屋を手伝っていて、なかなかうまくいかない啄子さんとの距離も縮めようと努力していて、そのうえ、誰よりも、藤吉さんを心から信じていたんですよ。それなのに朝になっても帰ってこないから捜しに行ったら、ほかの女の人の部屋にいたなんて。そりゃ、怒りますよ!
松坂
だよね。若い頃の藤吉は詰めが甘いところがあった。プライベートでも仕事でも。
でも、寄席が軌道に乗ってからは、藤吉さんは間違ったことはしていないですよね。
松坂
結婚して夫婦という形になったことは、大きかったんじゃないかな。それをきっかけに藤吉は、「これでいいか?」「間違っていないか?」って、ちゃんと考えてから行動できる男になっていった気がする。
結婚当初は、夫婦の間で意見が食い違うことが多かったですよね。けんかが絶えなくて、お互い大変でした。
松坂
そこはやっぱり朝ドラに欠かせない要素のひとつでしょう。実際、夫婦になれば、どんなふたりだって、恋人のときよりけんかが増えるだろうし。
私としては、それまで藤吉さんのことを120パーセント受け入れていたから、急に言いたいことを言うようになって、どう演じればいいか悩みました。
松坂
ああ、そうだよね。
でも、あの頃からてんは自分の意見をしっかり持って、それをちゃんと藤吉さんに言えるようになった。たぶん、隼也という存在ができて、てんも大人になったんだなって思いました。
松坂
最初のけんかを乗り越えたことで、ひとつの家族として、信頼関係は深まったよね。俺はふたりが仲直りした直後の、家族そろっての朝ごはんのシーン、好きなんだよ。
私も好き! 
松坂
このドラマは風鳥亭を中心に物語が展開しているから、家族3人だけのシーンや、家庭での食事のシーンが意外に少なくて。だからこそ、あのシーンは大事にしたかったんだ。
あのときは、幼い隼也も泣かずにずっと私のひざの上に座っていてくれて、うれしかったな。あったかい家族のシーンになりましたね。

ふたりで作ってきた物語だと思うから

松坂
藤吉はひとりで先に旅立ってしまったわけだけれど、てんはその後、元気にしているのかな。
はい。確かに藤吉さんの存在は消えてしまったけれど、てんの心持ちは、以前とあまり変わっていません。隼也がいるし、何より、藤吉さんとふたりで生み、育ててきた会社があるから。
松坂
そうか、それはよかった。
藤吉さんの遺志を受け継いで会社を発展させていくことに力を尽くすことで、てんは今も藤吉さんと一緒にいられるんです。事務所に大きな遺影が飾ってあって、よく話しかけてますよ。
松坂
隼也はどうしてる?
藤吉さんに性格が似てきたともっぱらの評判です(笑)。だから彼の人生も、若い頃の私たちのように、これからいろいろあるみたいで……親の目線に立ってみると、ほんと、しんどい!
松坂
今度はてんが巣立っていく隼也を見守る立場になるんだよな。
親としてどう気持ちの整理をつけて隼也に接していけばいいのか、難しいです。
松坂
それがてんの今後の課題だね。藤吉としては、やっぱりこの先もてんにずっと笑っていてほしいと願っていると思う。だから俺も、今までと同じスタンスで、てんたちのことを思い続けるよ。
ありがとうございます! 「わろてんか」は、ふたりで作ってきた物語だと思うから、ちゃんとふたりの物語としてすてきに終わらせたいと思っているんです。半年間ふたりで一緒にやってきてすごく楽しかったから。
松坂
おっ、それはうれしいね。俺も変わらず全力で支えていくよ。見守るというより、もっと積極的に関わっていくから。
本当? よかった! では、最後まで「二人三脚」で、どうぞよろしくお願いします!

(『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 わろてんか Part2』より再録)

葵わかなさん
スタイリング=岡本純子(Afelia)
ヘア&メイク=吉田美幸(B★side)
衣裳協力=ニットカーディガン¥38,000/ハウス オブ ロータス(ハウス オブ ロータス 二子玉川店 TEL03-6431-0917)
松坂桃李さん
スタイリング=小林 新(UM)
ヘア&メイク=Emiy

プロフィール

あおい・わかな

1998年生まれ、神奈川県出身。2009年、ドラマ「サムライ・ハイスクール」でデビュー。主な出演作に、映画「陽だまりの彼女」「くちびるに歌を」「サバイバルファミリー」「ミッドナイト・バス」など。NHKでは、「舞え!KAGURA姫~広島発地域ドラマ~」などに出演。18年は「ラーメン食いてぇ!」が公開予定。

まつざか・とおり

1988生まれ、神奈川県出身。2009年、ドラマ「侍戦隊シンケンジャー」でデビュー。主な出演作に、映画「ツナグ」「マエストロ!」、ドラマ「視覚探偵 日暮旅人」など。NHKでは、連続テレビ小説「梅ちゃん先生」、大河ドラマ「軍師官兵衛」などに出演。18年は映画「不能犯」「孤狼の血」が公開予定。