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世界が見守る中、サダム・フセインの像がバグダードの中心で破壊された2003年4月。掠奪者の一群がイラク国立博物館を襲う。近くにアメリカ軍の戦車隊が配備されていたにもかかわらず、掠奪は阻まれることなく、人類の文化のもっとも古い遺物を含む約1万5000点の「メソポタミア」の宝がブラックマーケットの陰へ消えていった。さらに、大規模で組織だった盗掘が始まり、大量の文化財が掘り出され、闇に消える。その数はおよそ50万点。人類共有の遺産の損失は計り知れない。
本書は、軍人・官僚・戦争立案者・考古学者・収集家といったさまざまな「当事者たち」へのインタビューと、彼らが残した記録によって、掠奪者からイラクの文化遺産を保護することができなかった圧倒的な準備不足――アメリカ合衆国政府の失態――を詳らかにする。悲劇が生まれ、それが長く続いたのは、文化遺産保護を支援する人たちの努力が残念なまでに脆弱であったこと、また、危機に対する軍の組織的な無関心さによって倍加されてしまった事実――ペンタゴンの機能不全と誤った情報伝達にもあったこと――を暴き出す。
著者のロスフィールドは、事実を現在にまで引き寄せながら、国際社会がいまこそイラクから学ばなければならない教訓を論じ、同様の悲劇が繰り返されることに警鐘を鳴らす。軍事進攻と文化遺産の消失という破滅的な組み合わせによって紡がれる「現代のクロニクル」――これは、私たちの過去と未来を読み解くための必読書だ。
■翻訳者
山田大樹(Yamada Hiroki)――東京文化財研究所文化遺産国際協力センター・アソシエイトフェロー
山藤正敏(Yamafuji Masatoshi)――奈良文化財研究所都城発掘調査部(平城地区)研究員
有村 誠(Arimura Makoto)――東海大学文学部歴史学科准教授
赤穂菜摘(Ako Natsumi)――金沢大学人間社会環境研究科博士前期課程
谷口陽子(Taniguchi Yoko)――筑波大学人文社会系准教授
増渕麻里耶(Masubuchi Mariya)――東京文化財研究所文化遺産国際協力センター・アソシエイトフェロー
鈴木 環(Suzuki Tamaki)――京都大学学術研究支援室リサーチ・アドミニストレーター
久米正吾(Kume Shogo)――東京藝術大学社会連携センター特任講師
間舎裕生(Kansha Hiroo)――東京文化財研究所文化遺産国際協力センター客員研究員