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なぜ、わが子を棄てるのか
親が育てられない子どもを保護する場所として、一民間病院によって2007年に開設された赤ちゃんポスト。「不倫相手の子どもだから」「留学の支障になるから」といった倫理観・責任感の欠如ともいえる預け入れがある一方で、出産や子育てに問題を抱え、追い詰められた母親たちを救ってきた。なぜ育児放棄、児童遺棄はなくならないのか。ポストという存在を通し、現代の日本が抱える複数の課題を浮き彫りにしていく。
追い詰められた女たち、身勝手な男たち
なくならない育児放棄に児童遺棄。
「ポスト」が社会の暗闇を浮かび上がらせる
その場所は、女性たちにとって最後のとりでであった。
“「赤ちゃんポストがなければ、今どうなっていたのかな、と考えます。ニュースで取り上げられているように、遺棄していたんじゃないかなとか……」
テレビカメラの前でこれまで淡々とインタビューに答えていた文乃さん(仮名)の声が、一瞬、震えたのを私は聞き逃さなかった。膝の上で重ねられた手が強く握り込まれ、指先が赤くなっていた。”
──第二章「追い詰められた女たち、身勝手な男たち」より