「英語テキスト活用BOOK」 1年続けたら必ずできるようになる
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インタビュー

大人気講座!

1年続けたら必ずできるようになる

「ラジオ英会話」の講師、大西泰斗先生が語る、
使える英語に欠かせない勉強法とは?

最終更新日 2019.2.14

NHK「ラジオ英会話」講師 大西泰斗


単語のイメージをつかみナチュラルな英語を手にする

 2018年度の「ラジオ英会話」は「語順」にフォーカスした英文法を学んできました。この一年間でみなさんは、どう並べれば英語らしい文が出来上がるのかを知り、時表現や助動詞など文を構成する必須の基本表現、さらに関係詞などの文構成のテクニックを十二分に学んで頂きました。番組中の実践に即したトレーニングを重ねたみなさんからは「英語が話せるようになった」という、うれしいご連絡も多数届いています。
 ただ、ここで申し上げておかなければならないのは、文法の習得は私たちが求める会話力へのスターティングポイントにすぎないということです。文法を学べば「文法的に可能な文」を作ることはできます。ですがその可能な文、意味はわかる文が、自然な文であるかどうかは別問題です。またご自分が作った文が果たして、言いたかったことにピッタリと寄り添う文であったのかどうかも疑問です。
 4月からは「意味はわかる」と「自然な・意を尽くした」の間に横たわるギャップを埋めていく作業を開始します。これからの目標は「話せるかどうか」ではありません。「よりよく話す」ことが目標です。そのために私が用意したカリキュラムは「基本表現(単語)の理解と習熟」です。

その表現に感覚が通っているか

 私はよく魚を捌きますが、このあいだ馴染みの板前に「包丁の背に人差し指を乗せて切ってご覧なさいよ」と教えて貰いました。試してみると、今まで不器用だった切っ先に突然指先の感覚が宿り意のままに動き始めるのです。

 みなさんの英単語には「感覚」が通っていますか?

 私たちの英語学習は往々にして「英語を日本語に訳す」作業一辺倒になりがちです。そうした作業を通じて頭に入れた単語はあまり会話の役には立ちません。英単語を日本語訳で理解しているからです。
 日本語で英単語を理解することができないことは、たとえば前置詞のonを辞書で調べてみればすぐにわかります。「~の上」といった定訳以外にも「進行中で」「おごりで」「~するとすぐ」「(薬などを)摂っている」「~について」などなど様々な訳が出てきます。この日本語訳をすべて覚えてもそもそもonはなぜこうした使い方をするのかはわかりません。onが何を意味しているのかがわからなければ、look down on(~を軽蔑する)、on Sunday(日曜日に:曜日のon)、depend on(~に依存している)といった「熟語」も、機械的に覚える他ありません。日本語訳を覚えただけでは英語表現を使いこなすことなどできはしないのです。
 「包丁の背に人差し指を乗せる」---「よりよく話す」ためには、単語に対するそもそもの態度を改めなければなりません。日本語訳の向こうを眺める態度です。私は日本語訳を越えた単語の感覚を「イメージ」と呼んでいます。大きな表現力をもった基本単語のイメージをつかめば、みなさんの英会話は強力な援軍を手に入れることになるのです。

onのイメージ

 せっかくですから、この機会にonのイメージについて簡単なお話をしておきましょう。
 前置詞類のイメージは単純な位置関係です。onは、みなさんがよくご存知の通り「~の上」。「~の上」という日本語訳ではなく「~の上」という位置関係であることに注意してください。「~の上」という位置関係(①)はすぐさまon Sundayを生み出します。「日曜日」という(面積をもった)ステージ状の場所が意識されているのです。また「~の上」は「接触②」につながります。On A, B(Aが起こるととすぐB)といった使い方はこの延長線上にあります。また「~の上」を「(下が上を)支えている(③)」と解釈すればdepend on(~に依存する)もすぐに納得できるでしょう。さらに「(上が下を)圧迫している(④)」と取れば、concentrate on(~に集中する)、influence on(~に対する影響)といった使い方も自然です。力が対象に向かうことを意味しているからです。look down onも自然な使い方ですよ。
 試しに圧力を伴った「軽蔑」の視線が自分にグッと向かってくるのを感じながら、Don't look down on me.(僕を軽蔑しないでくれ)と声に出して言ってみましょう。…「私を軽蔑するな」という日本語訳以上の「意味」を感じてくれましたね。それが表現に感覚が通うということなのです。感覚が通った単語は忘れません。感覚が通った単語は応用が効きます。
 講座ではネイティブスピーカーの感覚に肉薄しながら、みなさんに英単語の「感覚」を伝えていきます。前置詞だけでなく、動詞、副詞、形容詞などなど、会話で基本となる表現をこのレベルで掴んだなら、みなさんの会話はこの一年で大きなブレークスルーを迎えることになるはずです。

受験勉強にも “もちろん ” お勧めです。

 「ラジオ講座」は、社会人だけでなく高校生以上のすべての学習者を対象としています。すでに多くの高校でラジオ英会話を使った学習が進められており、受験を控えた高校生にも最適な教材となっています。
 ラジオ英会話の目標は「英語を話す」ことにあります。「話す」を伸ばす貴重な学習機会であることはもちろんですが、目標を「話す」に置くことによって従来の訳読型の学習を大きく越える、「読む・聴く・書く」を含む総合的な力を養うことができます。
 たとえば「読む」。「話すのはあまりだけど、訳読なら得意」---それが日本人の平均的自画像でしょうが、実は私たちは訳読に致命的欠陥を抱えています。それはスピード。ふつうの高校生に英文を読んでもらうと、大抵はネイティブが読むスピードの10分の1も出ません。それは「左から右に」語順通り英語を理解する訓練ができていないからです。
 I have a friend who works for NHK.
 この文をみなさんはどう理解しましたか?「関係代名詞節を示すwhoがあるからwho以下の内容をよく吟味してから、先行詞a friendにかけて訳す」---これでは語順を逆行して読むことになり、大きく時間をロスしてしまいます。a friend→who works for NHKの順に「左から右に」理解しなくてはなりません。
 もちろん受験指導でも「英語は左から右に書かれているから、順序よく読みなさい」とはよく言われますが、この指導は絵に描いた餅です。左から右に進むとき、どういった要素を期待しながら右に進むのかがわからなければ、意味のつながりがわからないからです。
 ラジオ英会話では、英語を語順通り話すための語順ルールを紹介しトレーニングを行いました。語順は「話すため」のもっとも基本的な学習事項だからです。上の文は、英語で最重要の語順ルール「説明ルール:説明は後ろにおく」に従っています。順序通りI have a friend(友達がいる)と読んでから、a friendの「説明」を右に期待しながら読み進めればいいだけです。who works for NHKでもfrom England でもいつでも説明は後ろ(右)。それが英語ということばのリズムなのです。
 語順やその他の文法事項についての解説は、今年も継続していきます。語順を中心とした文法と、イメージによる学習によって、英語のすべての領域で今までにない力を得ることができるでしょう。

ラジオ英会話の学習法:英語に近道はない!丸ごと覚えれば話せるようになる!

 現在の「ラジオ英会話」は昨年4月に開講しましたが驚いたことがあります。通常語学のテキスト部数は最初の4月が一番多くその後漸減していくのですが、この講座はほとんど部数が変わらず。講師としてこれに勝る喜びはありません。本当に身に余る、ありがたいことだと思っています。ただ、少し気になるのは、せっかく購入して頂いたテキストを読者の方々が100%使い切っているのかどうかということ。最後に少しだけ、テキストの使い方についてアドバイスさせてください。 テキストのレッスン冒頭には毎回「ダイアログ」があります。可能な限りここを覚えること---それがアドバイスです。
 みなさんは文法をマスターし、これからさらに基本単語の力を手に入れようとしています。そのみなさんに欠けているのは何か。それは「文の数」です。ネイティブスピーカーは---日本語を考えてみればすぐにわかりますが---文を「作りながら」会話をしているわけではありません。文法を思い出し単語のイメージを駆使しながら、英作文しているわけではないのです。
 文法も意識的に学んでいない、ましてイメージによる単語習得もしていないネイティブスピーカーが自由に母国語を操れるのは「無数の文を覚えている」からです。どこかで耳にした、テレビで誰かが言った、本で読んだ、ありとあらゆるありふれた文。頭にストックした無数の文を適宜、多少の加工をしながら口から出す。それが会話の本質です。ありふれた文だから、誰にでもすぐに意図が伝わり反応することができるのです。文法も語彙知識も、最終的にはこのありふれた平凡のなかに溶け込んでいかなくてはなりません。
 ラジオ英会話のダイアログは、標準的な文を用いた完全に自然な会話です。丸暗記すれば、日常使うことのできる文ばかりです。いつも手元にテキストを置いてください。いつもより早く起きた朝に、通勤通学時に、テレビのバラエティ番組に飽きたときに、ダイアログを音読・暗唱してください。
 最初の1、2か月は大変ですよ、そりゃ。外国語ですから。ですが、がまんして続けていると覚えるスピードは徐々に上がってきます。文法・語彙の説明とあいまって、ネイティブスピーカーの意識の動き方がありありとつかめるようになってきます。そうやってつかんだ無数の文がみなさんの会話力を大幅に押し上げることは論を待ちません。

 文法の復習、基本単語のイメージ、そしてダイアログの暗唱。それが2年目のラジオ英会話です。ぜひ1年間続けください。1年たったとき「ああ、できるようになったな」と実感することが必ずできるはずですから。

プロフィール

講師 大西泰斗(おおにし・ひろと)

「ラジオ英会話」講師(2018年度~)
筑波大学大学院文芸言語研究科博士課程修了。英語学専攻。オックスフォード大学言語学研究所客員研究員を経て、現在、東洋学園大学教授。NHKテレビ「3か月トピック英会話~ハートで感じる英文法」、「しごとの基礎英語」などの講師を務める。『ハートで感じる英文法 決定版』(NHK出版)、『ネイティブスピーカーシリーズ』(研究社)、『一億人の英文法』(東進ブックス)、『英語表現WORD SENSE』(桐原書店)など著書多数。