「英文法」の勉強にひそむ独特の倦怠感、身に覚えがありませんか。
　ひとたび文法書を開けばその項目は多岐にわたり、解説の量も膨大。「こんなことまで覚える必要あるの？」なんて思っても、それを判断する指針はありません。英語学習の世界はさながら、出口の見えない“森”のようです（まさにそんな名前の参考書もあるほどで、森の深さは推して知るべしでしょう）。
　本書はそうした深い森の中で迷い、何度も挫折をした人が、英語の世界に身軽に分け入るための、英文法の“サバイバル・キット”です。ポイントは、各文法の「核心」をつかみ、ルールを極限までシンプルにしてしまうこと。それによって暗記事項は激減するのみならず、そのルールが英語を読み解くときにもそのまま機能し、具体的に役に立つのです。
　進行形にする動詞としない動詞の判別方法、仮定法や受動態といったルールの存在意義、ややこしいさまざまな構文をスムーズに読みこなしていくための考え方など、学校の授業ではわかったような、わからないような理解の仕方をして、テストが終われば忘れてしまっていた項目が、本書で示される核心を知ることで、びっくりするほど記憶に定着していきます。はじめの一歩を踏み直すことで得られる眺望、英語をまなざす「解像度」の変化は、本書を読んでのお楽しみです。
　著者はリクルートが運営する動画配信授業「受験サプリ」で教鞭をとるカリスマ講師で、ベストセラー「世界一わかりやすい」シリーズの著者、関正生さん。看板に掲げる「わかりやすさ」は、自身も暗記に苦しめられたからこそ辿りつけた試行錯誤の賜物です。文法用語や従来の説明を安易に否定するのではなく、中学・高校で多くの人が受けた解説も効果的に生かしながら展開される講義は、英語好きでなくとも引き込まれること必至。学びにつきまとう「暗記」から自由になるための、必携の一冊です。
（NHK出版　田中遼）