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インタビュー

英語ができたら、Hello! WORK
国境なき医師団・広報
谷口 博子さん

基礎英語2 2016年7月号連載

文・取材協力:髙橋和子
写真:編集部

国境なき医師団の広報って、どんな仕事?

 MSFは、紛争や自然災害の被災者、慢性的に基礎医療が受けられない地域の人々などを対象に、医療援助活動を行っています。広報部は、世界各地の命の危機をウェブサイトや広報誌などを通じて発信するとともに、新聞やテレビなどの報道機関に、医療援助の現場の実態を伝えてほしいと働きかけています。広報というと、一般的には、企業や団体の宣伝や情報伝達をイメージしますが、MSFの広報の根幹は、顧みられていない命の危機を世界に向けて証言することで、MSFでは「証言活動」と呼んでいます。

谷口博子さんに聞く5つの質問

─人道援助活動において必要な資質とは?

気持ちに寄り添う「共感力」、自分とちがう価値観や多様性を受け入れる「柔軟さ」、さまざまな意見に耳を傾けつつ、 自分の意見もきちっと伝える「コミュニケーション力」、この3つが大事ではないかと思います。わたしの親や先輩に言わせると、わたしは幼いころから、いわゆる「人間観察」を熱心にしている子で、それゆえに人の気持ちに敏感だったようです。確かに今も、人に対する興味や好奇心は強いほうだと思います。もともとの性格が、今の仕事に向いているのかもしれません。

─英語以外にやっておいてよかったことは?

ひとつは、旅です。見知らぬ土地で出会ったおどろきや感動は、人生の宝です。また、ほとんどの場合、航空券や宿泊先の手配、移動を自分ですることで、行動力や適応力も身につきました。もうひとつは、フリーランスの時期にコーチング※を学び、わたし自身もコーチングを受けたことです。コーチングとは、コーチを受ける人が自らの可能性や必要な答えを見つけるためのコミュニケーションサポートで、いいコーチに出会えたおかげで多くの気づきがありました。学んだ技術は、現在の仕事でも応用して います。

─スランプに陥ったとき、どう乗り越えましたか?

思春期のころは、勉強に、人間関係にと、何かと悩みがつきませんでした。そんなころに支えになっていたのは、信頼できる友だちです。悩みを1人で抱え込まず、友だちと共有することで心が軽くなり、解決策が見つかることが多くありました。大人になってからは、先ほど触れたコーチングが精神的なはげみになりました。もちろん、中学生や高校生のときにコーチングを受けてもいいと思います。そうした機会が身近にない人は、悩みや進路のことを気軽に相談できる大人がいてくれるだけで、視野が広がるのではないでしょうか。

─今後の目標や夢は?

諸外国の同僚が現地取材してくれた内容を伝えるだけでなく、自分自身での取材機会も増やして、「こういう場面で日本の人材が生かせないか」「こういう場所で日本の技術力が生かせないか」 といった視点でも情報を発信したいです。それによって、活動地の患者さんやスタッフと、日本社会とをつなぐ架け橋になれたらと思っています。また、日本のオピニオン・リーダー(発信力や影響力のある人)に現地に入っていただき、わたしたちにない客観的な視点で情報を発信していただくことも重要だと考えています。その架け橋にもなれたらうれしいです。

─読者のみなさんに メッセージを。

わたしは何をするにも石橋をたたいて渡るタイプです。ときにたたきすぎて橋をこわしてしまうほどの慎重派ですが、結果的には行動が大胆なことも多いので、 そうは見られないかもしれません。でも、そうやって既存の橋をこわしてしまったときに、向こう岸に渡ることをあきらめないで、木を組むなり、石を積むなり、自分なりの方法で新たな橋を作ろうと心がけています。その過程では苦労や失敗もありますが、それと同時に楽しさもあります。 完成した橋を渡ったときの喜びと、目の前に開けた景色は格別です。読者のみなさんも、何かにくじけてもあきらめず、自分なりの「橋づくり」に挑戦してみてください!

プロフィール

谷口 博子さん

特定非営利活動法人・国境なき医師団日本・広報部、広報マネージャー・編集長。大学卒業後、株式会社福武書店(現・株式会社ベネッセコーポレーション)にて教材の編集などに従事。退職後、1年間のロンドン留学を経て、フリーランスの編集者として 異文化・国際関係をテーマとする雑誌編集に従事。2009年に国境なき医師団(MSF)日本に入団。MSFの媒体やメディアなどを通じて世界の命の危機を伝える。