キッチン用品の展示会で購入した、シンプルな萬古焼(ばんこやき)の土鍋を愛用しているという、料理研究家の瀬尾幸子さん。何気なく手にとったものでしたが、その使い勝手のよさから、今では欠かせない道具なのだとか。
蒸し料理用に、穴の開いた中板(すのこ)が1枚ついているこの土鍋。鍋物の季節だけでなく一年中活躍します。蒸し物というとせいろや蒸し器を使うイメージですが、「ふだんから手近に置いている道具でないと、まず出すのがおっくうでしょう」と。おっしゃる通りです。
そして、「持ち手が丸いデザインで食卓になじむから、そのまま出せるところがいいんですよ」。コロナ禍の今は難しいものの、例えば友人が自宅を訪ねてきたとき、「私がずっと台所で食事の支度をしていると、疲れてしまうし、相手も気を遣ってしまうもの。これなら、野菜と肉をのせるところまで準備しておいて、そろそろ……となったら火にかけるだけ。あとはお酒でも飲んでいる間にでき上がり」。ふたを開けると香りとともに湯気が立ち上り、場も盛り上がること間違いなしです。
「土鍋だから、ゆっくり食べていても冷めにくいのがいいですよ。洗い物も、この鍋と取り皿だけだから楽ちん」
撮影のあと、すっかり空になった鍋からすのこを外して、中を見せてくれた瀬尾さん。そこには、野菜と肉のうまみがたっぷり溶け込んだ黄金色の蒸し汁が。
「ほら、おいしそうでしょう。これでいいスープができるかも!」。いったいどんな料理に変身させるのでしょう。楽しみですね!
せお・ゆきこ◎料理研究家。手早くつくれて、食べ飽きない「ふだんのおかず」ならおまかせ。日々の暮らしに寄り添った、合理的なレシピと考え方が世代を超えて支持を集めている。
撮影・邑口京一郎
ふたを開けると、セロリの爽やかな香りがたち上ります。
しっとり蒸し上がった野菜は、豚肉のうまみをたっぷり吸収。
好みの肉と野菜、好みのたれで、アレンジも自由自在!
丸い持ち手のついた、浅型のフォルムがスタイリッシュ。余分なものがなく、いつもの土鍋と違って“鍋っぽさ”が少ない、そのまま食卓に出してもなじむデザインです。
調理方法はいたってシンプル。「野菜はきっちり並べなくても大丈夫。同じくらいの時間で火が通るように切ることだけ、気をつけましょう」。野菜をたっぷりとれて、余分な脂は下に落ちるので、とてもヘルシーです。
蒸し料理に使うときは、具材をのせる前に鍋に水を入れます。「沸騰したときに具が水につからないように、すのこの下2㎝ほどあけておきます」。この水があるおかげで、焦げついたり脂がこびりついたりしないので、洗い物もラクラク。