よい道具には、理由があります。
料理研究家が愛してやまない台所道具の
逸品と、
その「わけ」を、ご紹介します。

バックナンバー一覧
Vol.2

瀬尾幸子さん
「持ち手が丸い蒸し土鍋」

「きょうの料理」11月号掲載分

キッチン用品の展示会で購入した、シンプルな萬古焼(ばんこやき)の土鍋を愛用しているという、料理研究家の瀬尾幸子さん。何気なく手にとったものでしたが、その使い勝手のよさから、今では欠かせない道具なのだとか。

蒸し料理用に、穴の開いた中板(すのこ)が1枚ついているこの土鍋。鍋物の季節だけでなく一年中活躍します。蒸し物というとせいろや蒸し器を使うイメージですが、「ふだんから手近に置いている道具でないと、まず出すのがおっくうでしょう」と。おっしゃる通りです。

そして、「持ち手が丸いデザインで食卓になじむから、そのまま出せるところがいいんですよ」。コロナ禍の今は難しいものの、例えば友人が自宅を訪ねてきたとき、「私がずっと台所で食事の支度をしていると、疲れてしまうし、相手も気を遣ってしまうもの。これなら、野菜と肉をのせるところまで準備しておいて、そろそろ……となったら火にかけるだけ。あとはお酒でも飲んでいる間にでき上がり」。ふたを開けると香りとともに湯気が立ち上り、場も盛り上がること間違いなしです。

「土鍋だから、ゆっくり食べていても冷めにくいのがいいですよ。洗い物も、この鍋と取り皿だけだから楽ちん」

撮影のあと、すっかり空になった鍋からすのこを外して、中を見せてくれた瀬尾さん。そこには、野菜と肉のうまみがたっぷり溶け込んだ黄金色の蒸し汁が。

「ほら、おいしそうでしょう。これでいいスープができるかも!」。いったいどんな料理に変身させるのでしょう。楽しみですね!

せお・ゆきこ◎料理研究家。手早くつくれて、食べ飽きない「ふだんのおかず」ならおまかせ。日々の暮らしに寄り添った、合理的なレシピと考え方が世代を超えて支持を集めている。

撮影・邑口京一郎

野菜と豚バラ肉の
土鍋蒸し

ふたを開けると、セロリの爽やかな香りがたち上ります。
しっとり蒸し上がった野菜は、豚肉のうまみをたっぷり吸収。
好みの肉と野菜、好みのたれで、アレンジも自由自在!

材料(2人分)

豚バラ肉(薄切り)…150g
パプリカ(赤)…1/2コ(100g)
セロリ…1本(100g)
スナップえんどう…8本(80g)
かぼちゃ…70g
生しいたけ…3枚(30g)
ポン酢しょうゆ…適量

ピリ辛ごまだれ

ポン酢しょうゆ…大さじ2
すりごま(白)…大さじ1 1/2
無調整豆乳…大さじ1
一味とうがらし…小さじ1/4
◎440kcal ◎塩分1.3g ◎15分
  1. パプリカはヘタと種を取り、縦に1㎝幅の細切りにする。セロリは軸を斜め薄切りに、葉をザク切りにする。スナップえんどうは筋を取る。かぼちゃは5㎜厚さの一口大に切る。しいたけは石づきを除いて薄切りにする。豚肉は長さを3等分に切る。ピリ辛ごまだれの材料は混ぜ合わせる。
    野菜はそれぞれ同じくらいの時間 で火が通るように切る。
  2. 鍋にすのこを置き、水カップ2程度を入れる。の野菜としいたけを混ぜてのせる。豚肉は広げて、野菜の上にのせる。
  3. ふたをして強火にかけ、穴から蒸気が上がったら、弱火にして7分間ほど蒸す。器に取り分け、ポン酢しょうゆまたはピリ辛ごまだれ適量をかける。

丸い持ち手がアクセント

丸い持ち手のついた、浅型のフォルムがスタイリッシュ。余分なものがなく、いつもの土鍋と違って“鍋っぽさ”が少ない、そのまま食卓に出してもなじむデザインです。

具をのせて火にかける
だけ!

調理方法はいたってシンプル。「野菜はきっちり並べなくても大丈夫。同じくらいの時間で火が通るように切ることだけ、気をつけましょう」。野菜をたっぷりとれて、余分な脂は下に落ちるので、とてもヘルシーです。

蒸し料理は洗い物が楽!

蒸し料理に使うときは、具材をのせる前に鍋に水を入れます。「沸騰したときに具が水につからないように、すのこの下2㎝ほどあけておきます」。この水があるおかげで、焦げついたり脂がこびりついたりしないので、洗い物もラクラク。

理由ありの道具たち
バックナンバー一覧