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Vol.20

今月の「器」=
なんでも盛れるちょうどいい角皿

選んだひと
城 素穂

じょう・もとほ=スタイリスト。ベルギーで食ともてなしを学び、雑誌や書籍で活躍する。

食器棚の中は丸いお皿ばかり。角皿も欲しいけれど、どういうものが使いやすいのか、よくわからなくて……。
そんな悩みに応えて、城さんが選んでくれたのが、今回ご紹介する角皿。桃山時代の美濃の古陶磁を研究する陶芸家が、古い器を参考にしてつくった作品です。
形、サイズ、色合いなどが盛り器としてちょうどよく、何を盛っても似合う使い勝手のいいお皿です。焼き魚、お刺身、ギョーザなどの主菜のほか、あえ物、おむすび、おつまみ、おやつなどなど。毎日の食卓で大活躍してくれる応用範囲の広い角皿です。

 6~7年前、城さんは何軒かの古道具店で、“御深井焼おふけやき”という名のお皿をよく見かけるようになりました。
「端正な形で、色味は生成りや薄い緑っぽい感じ。細かい貫入かんにゅうが入っている様子がきれいだなと思って、すっかりそのとりこになってしまいました」

「想像以上に許容範囲が広いので、ほぼ毎日のように使っていますね」

 そんなとき、“美濃おふけ展”というのが開かれるのを知って、新しいものも見てみたい!」と、そのギャラリーを訪問。そこで出合ったのが、今回ご紹介する陶芸家の安洞雅彦さんでした。
 安洞さんは名古屋市の古美術商の家に生まれ、独学で焼き物を学び、現在は岐阜県多治見市に工房を構えています。古い窯跡から出た陶片を収集し、その断面を見て当時の土の種類や釉薬を研究。織部焼や御深井焼の再現に、エネルギッシュにアプローチしています。今回ご紹介する角皿は、現代の御深井焼。そのルーツについて伺ってみました。

「御深井焼の由来は諸説ありますが、狭義には名古屋城の御深井丸の窯で焼かれたもののうち、灰釉を施したものを指すとされています。御深井丸の場所は、現在の名城公園のあたりですね」
 安洞さんは今回の角皿の江戸中期の本歌ほんかを所有していて、それを参考にこのお皿をつくっているそう。このシンプルな形は、粘土を板状にする「タタラづくり」という技法を使い、それを石こうの型に押し当てて成形します。
「仕上げに少し削るとシャープな感じになるのですが、かといってまっすぐではない柔らかいラインになるんです。美濃の焼き物はカチッとしているようで柔らかい、とよくいわれますね。灰釉の皿は窯のどの位置に置いて焼くかで、微妙に緑がかったり、黄色味が出たりするんです」と手仕事ならではの難しさもあるそう。」

   

 この角皿を愛用している城さんに使い勝手を聞いてみると、「このお皿は適度な立ち上がりがあって、大きすぎず、長すぎず、片手で扱えるサイズ感がいいですね。灰釉の色合いも盛るものを選ばないので、魚だけに限らず、どんなものでも盛れる懐の深さがあります。また、食卓が丸い器ばかりだと単調になりますが、角皿を加えることでパッとリズムが生まれて楽しくなりますね」とのこと。
 城さんは古い御深井焼に入っていた細かい貫入が気に入っていますが、これは新しい御深井焼にも入っています。「使い込むとさらに貫入が入るので、器を育てる感覚で楽しんでいただければ」という安洞さんの言葉に、城さんは「ますます楽しみになってきました」と笑顔で答えていました。

撮影・竹内章雄/構成&文・海出正子

今回紹介した商品

なんでも盛れるちょうどいい角皿

サイズ(約)
幅19 cm・奥行き10 cm・高さ2cm
価格
4,400円(本体4,000円)
制作
安洞雅彦

同商品はこちらに掲載されています。

「きょうの料理ビギナーズ」
5月号

2023年4月21日発売