じょう・もとほ=スタイリスト。ベルギーで食ともてなしを学び、雑誌や書籍で活躍する。
昔は各家庭で見かけたおひつですが、生活スタイルの変化から、使う機会は減りつつあります。そんな現代の暮らしに合わせて生まれたのが、アイデアが詰まったこの小さな2段のおひつ。城さんも興味津々で試してみたら、さまざまな用途に使えて、とても便利なことを発見!本来のおひつの役目のほか、お弁当箱、木の器、すし飯の盤台がわりにと、大活躍してくれます。
「実家には母の嫁入り道具のおひつがありました。木でできているおひつは炊きたてのご飯の余分な水分を吸収して、程よい湿度でご飯のおいしさを保ってくれるので、そのよさは実感していました。年月がたってたがが外れて修理に出したら、びっくりするほどきれいになって返ってきたんです。たがを締め直しただけでなく、黒ずんでいた木の部分もきれいになって。こういう昔ながらの道具は、修理しながら使い続けることができるんだと初めて知ったのです」と話す城さん。 そして最近出合ったのが、今回ご紹介する小さな2段のおひつ。 「吉野杉の白太と呼ばれる部分の無垢材を使っています。色が白く、ご飯に香りがつきにくいのでおひつ向き。無垢材は使い込むと味わいが出てくるので、おひつを育てるという気持ちで使ってみてください。木材は自然素材なので一時的に反ることもありますが、使ううちに戻ることが多いですね。たがが緩んだときは、いつでも修理できます。森を守るためには木を定期的に切らないといけないので、値段を抑えてできるだけ多くの方に木のよさを知ってほしいと思っています」
城さんはどのように活用しているかを聞いてみました。 撮影・竹内章雄/構成&文・海出正子
「えっ!2段? 小さいのにちゃんと銅製のたががついていて、かわいい」と目がくぎづけに。おひつとしてはリーズナブルな値段にも感動したそう。この小さなおひつをつくっているのは、香川県の谷川木工芸。昭和30年にすし桶製造所として創業し、現在は3代目の谷川清さんが継いでいます。
「時代とともにおひつの需要が減って、どうすればいいかと考えました。そこで、コンパクトなお弁当箱のようなおひつを思いついたのです」と谷川さん。このおひつは小さいながらも素材は本格的な吉野杉、たがは銅。代々受け継いでいる職人技を使って、手仕事で一つ一つ仕上げています。
「ご飯を炊いたとき、遅く帰ってくる夫の分だけ、この小さなおひつに取り分けておきます。おにぎりもこのおひつに入れておくと、しっとりおいしさが保たれるので、翌朝そのまま娘のお弁当箱に入れています。少しだけちらしずしをつくりたいとき、盤台がわりにしてすし飯をつくるのもおすすめ。ちらしずしの具を大人と子どもで変えて一段ずつ入れると、娘は自分用だと大喜びしていました(笑)。お重のようにおせちを盛るのもいいし、2人分のお弁当箱として使っても。1人のお昼ごはんに釜揚げうどんを入れたこともあります。アイデアしだいでいろいろと使えるから便利ですね」
今回紹介した商品
幅広く活躍する小さな2段のおひつ